こんにちは
管理者 とも@生き方カウンセラーです
カウンセリングやコンサルテーションを行う際に、学級や学校といった組織の中における、子供たちや教職員の関係を考えるときに、その集団の「心理的安全(性)」がどのようになっているのかを捉えることも大切です
この「心理的安全」という言葉は、企業などの組織だけでなく、文部科学省も学校においても「(教職員同士の)学びを持続的に蓄積できる環境づくり」のために「心理的安全性の確保」を示しています
そこで、「心理的安全」について紹介します
これがあることによって、子供や先生方が相談や話をしやすい雰囲気が作れ、学校経営や学級経営がより目標に近づいていくと考えます
この言葉については、
Amy C. Edmondson「チームが機能するとはどういうことか 『学習力』と『実行力』を高める実践アプローチ」2014 英治出版
をもとにしています
現在の学校も1つの組織ですので、各学校には組織図があるのが一般的と思います
それを見てみると、「校長」や「副校長」、「教頭」の管理職が上位にいて、その下に複数の教員がいる「鍋蓋型の組織構造」と言われています

学校は、さらに「教員」の下に、「学年」であったり、「学級」であったりという、「教員」が「指導者」や「リーダー」となって子供たちを組織している集団です
このような組織である学校において求められている「心理的安全」について考えていきます
1.「心理的安全」とは?
Edmondsonによると、
「心理的安全」=「関連のある考えや感情について人々が気兼ねなく発言できる雰囲気」
のことです
これは、「メンバーがおのずと仲良くなるような居心地のよい状況を意味するもの」とか、「自分の思ったことを伝えると、相手を傷つけそうだから言わない」とかという、「プレッシャーや問題がないことを示唆するもの」でもありません
「心理的安全」は、「反対意見が期待されたり歓迎されたりする雰囲気」について述べています
そして「反対意見に対して寛容であるために、生産的な話し合いと問題の早期発見が可能」になります
一般に、意見を言おうと決めるのは、信頼できているということを示します
(1)「心理的安全」の歴史
「心理的安全」という考えは、いつ、誰が考え始めたものなのでしょうか
それは、社会心理学、組織心理学として有名なEdger H. Scheinでした
1965年、MITのEdger H. Schein教授らは、心理的安全を生み出して、変化を確信させたり実感させたりする必要性を論じました
さらに、Edger H. Scheinはのちに、心理的に安全であれば、保身より共同の目標や問題の防止に思う存分、集中できるとしています
1990年、ボストン大学のW. Kahn教授は、心理的安全により職場でのパーソナル・エンゲージメントが可能になると論じています
彼は、「役割を果たす間に身体的、認知的、情緒的に自分の考えを表現しよう」という組織環境にエンゲージしようという個人の積極性に、心理的安全がどのように影響するかを研究しました
さらに、特定のグループでの人間関係が信頼と尊敬という特徴を持っていると、疑わしい点を好意的に解釈してもらえると思える可能性が高いとも論じています
1999年、Amy C. Edmondson(以下、「Edmondson」とします)は、「チームの心理的安全」という言葉をグループレベルの構成概念として紹介しています
この中でわかっていることは次のようなものです
・心理的安全は従業員一人ひとりの性質ではなく単一体としてのチームを特徴づける
・心理的安全のレベルは部署や作業グループによって様々である
・心理的安全は、個人の性格の違いによるものではなく、むしろリーダーが生み出すことができるし生み出す努力をすべき職場の特徴によって生じます
2.「心理的安全」を生み出す2つの要因
このような「心理的安全」を生み出すものとして、Edmondsonは次の2つの要因を示しています
⚪︎グループリーダーのフレームおよび行動
⚪︎ともに仕事をする同僚たちの日々の行動およびコミュニケーション
(1)グループリーダーのフレームおよび行動
「フレーム」とは、「ある状況についての一連の思い込みや信念のこと」のことです
例1
子供が教師の話を全く聞かず、授業中の立ち歩きが横行し、授業を進めていくのが厳しい学級があった場合

このような状況を学級担任がどのような「フレーム」でとらえるでしょうか。

「子供たちの管理ができていないから、子供たちの好き勝手にやっている」かなぁ

なるほど。じゃあ、その場合、この学級担任は、どんな行動をすると思う?

「だから、子供の管理をしっかりできるように、強く注意していく」かもねー

なるほど。じゃあ、他の「フレーム」もありそう?

「いろんなことで困っている子供たちがいる」かなぁ

なるほど。じゃあ、その場合、この学級担任は、どんな行動をすると思う?

「子供たちから話を聞いたり、他の先生方やスクールカウンセラーから話を聞いてもらったり、保護者と相談したりしよう」とするかも。

では、LalaとNoahが考えた学級担任だったら、どちらの「フレーム」を持った方が、子供たちは自分の考えを言いやすいと思う?

う〜ん。
Noahの方かなぁ。私が考えた方だと、子供の話を聞くよりも、「自身がしっかり管理しないといけない」と先生自身を追い込んでいそうだから

私も、そう思うかなぁ
先生が「管理をしっかりしないと」と考えた場合、その後は厳しい対応をしそうで、子供の話を聞かないから、相談や自分の考えを子供は話ずらそう

なるほどね。2人ともそのように感じたんですね
心理的安全性とは、「関連のある考えや感情について人々が気兼ねなく発言できる雰囲気」のことだから、このような雰囲気があると、子供たちも相談しやすいと思います
例2
学校の教師の仕事を「教師が指導する場」と捉える「フレーム」と、「教師が学習する場」と捉える「フレーム」

これらの「フレーム」で、教師の行動はどう変わりそうですか?

「教師が指導する場」の「フレーム」で考えると、「あれしなさい」「これしなさい」と、事前に教師が答えを持っていて、それを一生懸命、指導するように思う

「教師が学習する場」と捉えると、教師にもわからないこと、うまくいかないことがある。それを子供達と一緒に学びながら獲得していこうとしそうに思う

そうですね。「フレーム」が変わると、行動も変わっていきそうだね。
他にも、リーダーの「フレーム」と行動には様々ありますよー
(2)ともに仕事をする同僚たちの日々の行動およびコミュニケーション
もう一つの要因として、「ともに仕事をする同僚たちの日々の行動およびコミュニケーション」があります
「日々の行動およびコミュニケーション」としては、「チーミング」をしていくことが考えられます
「チーミング」とは、Edmondsonによると、「協働するという『活動』のことを表す造語」です
このチーミングは、
・専門家たちを団結させ、彼らがしっかり務めを果たせるようにするプロセス
・リスクを負う、失敗と向き合う、境界を超える
・休む間のないチームワーク
といったものを表しています
そして、
「チーミング」によって様々な意見の違いを超えて確かに協働できるようになると、チームの中で信頼でき、率直に会話したり失敗を隠さず話したりすることになり、心理的に安全な環境になっていきます
さらに、心理的安全があることにより、チーミングが素晴らしい成果を上げていきます
例えば、
ー学校での行事の場合ー
学校における各行事によって、リーダーとなって動く職員が異なったり、中心となる組織を構成する人員も異なったりします
また、地域の人材の活用や地域の行事と連携を図ったりすることもあります
そのため、チーミングをしていくことが、行事を成功させていくことにつながってくると考えます
運動会などの体育的行事において、リーダーとなるのは体育主任や担当者です
現在の運動会では、約20年前には当たり前であった組体操での「ピラミッド」や「やぐら」などは禁止されているところもあります
また、学校の方針によっては、児童会や生徒会と一緒に運営したり、PTAとの連携を図ったりして行うことで、子供たちが中心で作り上げたり、保護者・地域も一緒に楽しんだりする場合もあります
そのため、リーダーとともに、児童会や生徒会の担当者や地域連携の担当者などでチーム(運動会実行委員会など)をつくり、どのような運動会にしていくかを、学び、検討し、取り組んでいくこととなります
習得した知識や技術が数年で古くなっていく、変化と競争の激しいグローバル経済の中で成功するために、「協働するという活動」は「ともに仕事をする同僚たち」と組織で学ばなければならないということになります
そして、学び続けながらその内容を実行することで、絶え間ない学習と高いパフォーマンスを結びつけていきます
3.心理的安全を高める
Edmondsonは、「心理的安全」は、「簡単な管理テクニック一つでは変えることの不可能な、とらえどころのない、人間関係に関する一連の考え」としています
彼女は、「心理的安全を直接的かつあからさまに生み出そうと重点的に取り組むのは、必要な変化を生み出す方法として間違っている」ことを、これまでの研究から示しています
このような「心理的安全」に最も重要な影響をもたらすのは、いちばん近くにいるマネージャーや監督者や上司といったリーダーとなります
リーダーが「心理的安全」を高めていく行動が次のようなものです
(1)心理的安全を高めるためのリーダーの行動
・直接話のできる、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を認める
・メンバーの意見を重視しているので、意見や考えを出してほしいことを伝える
・自分もよく間違うことを積極的に示す→質問して、メンバーから意見を引き出す
・失敗は学習する機会であることを強調する
・具体的な言葉を使って話し合う
・境界を設ける=どんな行為が非難に値するかを明確に示す
・境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる(罰や解雇も含む)→公正さと責任感が生まれる
まとめ
「心理的安全」についてのまとめです
「心理的安全」は生ぬるい基準や自由奔放によって生み出されるものではなく、どんな職場にも困難と制約があり、進歩のためにはそれらについて率直に話す必要があると正しく認識することによって生み出されるもの
「心理的安全」のこれ以上の詳細は、Edmondsonをお読みください
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参照
英治出版 Amy C. Edmondson「チームが機能するとはどういうことか 『学習力』と『実行力』を高める実践アプローチ」(2014)
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